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(2)潜堤施工前後の地形変化
潜堤や人工リーフ等による海岸保全効果については、多くの実験的研究がなされているが、本研究では潜堤施工前後による地形変化を比較し、地形変化が安定となる潜堤位置について検討した。検討の最初は中型造波実験の地形変化が、実際の地形変化を再現しているかどうかを確認するために、現地の地形変化をほぼ再現できる当所の大型造波水路(長さ205m、幅3.4m、高さ6.0m、最大波高20m)による地形変化と比較した。
この結果、波高10cm程度の中型実験でも現地と同一粒径を用いて、現地スケールの定性的な地形化が再現できることを確認した。次に潜堤施工前後の地形変化の実験結果について、砂村・堀川のCパラメータで分類される侵食性、堆積性および侵食・堆漬の中間の波浪条件別に以下に述べる。
?侵食性の波浪条件(C>8)
A,B潜堤では、地形変化が若干緩和されたり、汀線付近が安定化する傾向にある。C潜見では水域内は潜堤が無い場合より堆積が大きくなっている(Fig-9.)。

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Fig-9. Sea bottom change for wave action

?堆積性の波浪条件(C<4)
潜堤がない場合、汀線付近に堆積するが、A潜堤では、さらにそれ以上堆積する。しかし、B、C潜堤では、地形変化は低減し、汀線付近の堆積が減少している。
?侵食・堆積の中間の波浪条件(4<C<8)
C潜堤では、潜堤水域内の地形変化は安定化する。
以上の結果から、潜堤が脇・場合の地形変化を基準として、潜堤施工前後による地形変化をまとめると、天端高が水深の7割程度とした潜堤の場合、相対水深h/Lが約0.055〜0.065の位置に設置すると、侵食性の波浪条件から堆積性の波浪条件に至るまで、潜堤水域内の地形変化を少なくできることが判った。
(3)潜堤施工前後の貝の分布
?侵食性の波条件
波高力判5m程度の侵食条件ては、潜堤が無い場合の砂移動とは逆に模型貝は汀線上に集中しているFig-10a)。これに対して、AとB潜堤では、波作用前の分布とほぼ同じような分布となっている(Fig-10.)。しかし、C潜堤では潜堤内側基部および下線上に集中し、潜堤設置の効果はあまり見られない。
?堆積性の波条件
潜堤がない場合、模型貝は水深100mから沖方向に集中し、侵食条件と同様、砂の移動とは逆の方向へ移動している。これに対して、A、B潜星では汀線上に模型貝が集中するが、C潜堤では移動が少なく安定化している。
?中間の波浪条件
潜堤がない場合、模型貝は水深約75mに集中したが、C潜堤では、波作用前の分布とほぼ同じで安定化しており、潜堤設置の効果が特に見られる。
以上の結果を、潜堤が無い場合の貝の分布を基準として、潜堤設置による模型貝の安定性をまとめると相対水深h/Lが0.065より浅い水深に天端高を水深の7割程度とする潜堤を設置すると、侵食性の波浪条件から堆積性の波浪条件に至るまで、貝の移動を低減でさること判った。

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Fig-10. Bivalve distribution for wave action

4−3 波制御による貝の移動・打上げ減耗低減効果
(1)寄せホッキ
ホッキガイは前述したように冬季の暴風時に「寄せホッキ」が見られる。このような寄せホッキの現象については、城戸は次のような過程と推測している6)。?海水温が急に低下して、ホッキガイの活力が失われ、潜砂行動が鈍くなる。そして、?動きの鈍くなった貝の潜砂速度に比べ、時化の高波浪により海底地形の洗掘速度は上回り、貝は露出する。?露出した貝は海底面を波や潮汐などにより岸方向に輸送され海岸へ打上げられる。

 

 

 

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